酸性雨調査・研究

 酸性雨とは石炭や石油などの化石燃料の燃焼などに伴って、硫黄酸化物や窒素酸化物が発生することにより、
これらの物質が雲粒に取り込まれて複雑な化学反応を繰り返して最終的には硫酸イオン、硝酸イオンなどに変化して
降下する現象のことを言います。酸性雨は植物の代謝を妨げたり、土壌や湖沼を酸性化させ、
生物や森林など生態系にも悪影響を及ぼすことが懸念されており、ヨーロッパではすでに19世紀頃から
酸性雨による被害が見られています。
 日本では、降水中のpHの年平均値が4.8~4.9ですでに欧米と同程度であり、国内でも原因不明の
樹林衰退や酸性雨による影響が生じている可能性のある湖沼などの事例が報告されています。
 財団法人上越環境科学センターでは、上越地域における酸性雨対策に貢献するため、
平成9年度から酸性雨・雪の調査研究を開始しています。研究テーマとしては、1.定期モニタリング、
2.腐食等による構造物への影響、3.生態系への影響などを選定しました。以下にその概要を報告します。

1 定期モニタリング調査

 上越地域における降水のpH及び酸性物質等の実態を年間を通じて把握することで、
酸性雨・雪対策の基礎データを得る目的で、平成9年度から上越地域3ヶ所(直江津、高田、妙高高原)において
定期モニタリングを行っています。

2 上越地域の冬季の雪に含まれる酸性物質等の分布調査

 日本海側では、冬季の降雪に高濃度の酸性物質が含まれていることが以前から指摘されています。
このため、上越環境科学センターでは酸性雨調査の一環として、
上越地域でこれまで4年間(平成9~12年度)にわたって、冬季に雪を採取して雪に含まれる
酸性物質などの化学成分を分析し、濃度分布などを調査してきました。
 酸性雪についてのコラム

3 構造物被害調査

 上越地域における酸性雨の影響の現状を把握するため、酸性雨によって生成するとされている
コンクリート構造物でのコンクリートつららや白華状物質(エフロエッセンス)、ブロンズ像から緑青が浮き出し
表面に雨水の流れに沿って
できる条痕(アシッドライン)の発生状況の調査を平成10年度に実施しました。

4 酸性物質等による森林生態系影響調査

 上信越の自然地域における酸性雨による生態系への影響を検討するため、
妙高高原町笹ヶ峰ドイツトウヒ林「妙高山麓県民の森」において林外雨・林内雨・樹幹流のモニタリング調査と
植物の調査を平成12年度から開始しています。

いもり池周辺環境保全調査(平成6~10年度)

 当センターでは収益事業としての環境調査の他に、公益事業としての調査研究を行っています。
平成6~10年度には上信越高原国立公園のいもり池において環境保全のための調査研究を実施しました。

写真:いもり池から妙高山を望む

現況調査

水質・水象調査-いもり池や流入する河川の水質・流量などを調べました。
植物調査-植物群落やミズバショウなどの分布状況を調べました。
動物調査-オオヨシキリの繁殖状況やトンボ類の生息状況を調べました。
景観調査-季節ごとに定点から写真撮影を行い、景観の変化を把握しました。

保全実験

 ヨシ刈り取り実験-刈り取りの効果と影響を調べ、実際の管理方法として適切かどうか判断しました。

 以上の結果に基づいて保全対策を立て、具体的な管理方法を策定しました。
平成11年度からは地元の人たちの手による保全作業が行われています。

保全作業:6月にまだ小さい湿原の植物をよけながらヨシだけを刈り取ります。

保全実験:ヨシだけを刈り取り、ミズバショウなどへの影響を観察しました。

刈り取り前

刈り取り後