代表的な食中毒の原因と症状・予防方法
厚生労働省のデータによると、2000年の食中毒事件発生件数は、全国で2,247件、
患者数は43,307人(死者4人)となっています。うち、新潟県では36件、481人となっています。
新潟県での発生状況の推移を月別にみると下のグラフに示すように、発生件数では10月に最も多く、
患者数では1月が最も多いものの概ね5月~10月にかけて患者の増加が見られることが判ります。
また、全国の食中毒事件の病因物質別の統計データを見ますと、患者数の多い順に
1. ぶどう球菌・・・・・・・・・ 87件 14,722人(死者1人)
2. 小型球形ウィルス・・・245件 8,080人
3. サルモネラ属菌・・・・・518件 6,940人(死者1人)
4. 腸炎ビブリオ・・・・・・・・422件 3,620人
5. 病原大腸菌・・・・・・・・・203件 3,051人
6. ウェルシュ菌・・・・・・・・ 32件 1,852人
7. カンピロバクター・・・・・469件 1,784人 となっています。
ここでは、代表的な食中毒原因と症状・予防方法についてまとめるとともに、
家庭でできる食中毒予防のポイントについて記しました。
食中毒原因物質 |
由来 |
原因食品 |
予防方法 |
黄色ブドウ球菌 |
黄色ブドウ球菌は、化膿したところ、おでき、水虫、にきび、喉や鼻の中、皮膚、毛髪等に常在しており、健康な人でも保菌しています。この菌は食品の中で増殖する際に毒素を生成し、この毒素が人に危害を及ぼすものです。 |
手指などから食品を汚染する機会が多いため、あらゆる食品が原因食となる可能性がありますが、特におにぎりが原因となったケースが多数を占め、その他では弁当、シュークリームなどが原因食品となっています。 |
この菌自体は熱に弱く、十分に加熱調理すれば死滅します。 また、食品を10℃以下で保存することにより菌の増殖を抑える。食品の取扱時に手を良く洗浄殺菌する。手指などに化膿したところがある場合は食品に直接触れないようにすることで予防が図れます。 |
サルモネラ菌 |
サルモネラ菌は元々人畜共通疾患の原因菌であり、家畜、家禽の腸管に高率に保菌されている。このため、鶏、豚、牛、ペット等の動物が保菌しています。 サルモネラが付着した肉や卵を原材料として使用したときに、調理済み食品を汚染したり、サルモネラを保菌したネズミの糞や尿により汚染されたり、ときには調理者自身が保菌者になって食品を汚染し食中毒を引き起こすこともあります。 |
うなぎ、レバーの刺身、卵焼き、自家製マヨネーズ、ローストチキンなど、食肉や卵等の畜産食品に多く見られます。 |
レバーの刺身や肉等の生食は避け、調理の際には食品の中心まで十分に火が通るよう加熱することで予防が図れます。 |
腸炎ビブリオ |
腸炎ビブリオは海水中や海泥中に存在し、海水温度が20℃以上、最低気温が15℃以上になると海水中で大量に増殖し、魚介類に付着して陸上に運ばれます。 このことから、この菌による食中毒事故は7月から9月の夏期に集中しています。
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魚介類の刺身や寿司類が代表的ですが、野菜の一夜漬けが原因食品となるケースもあります。 |
腸炎ビブリオは海水と同じ塩分濃度でよく発育、増殖する。従って、海産の魚介類を調理する前には真水(水道水)でよく洗うことで予防が図れます。 腸炎ビブリオは一般の細菌に比べて、3~5倍の速さで増殖するので、生鮮魚介類を保存する場合は、わずかな時間でも冷蔵するように心がけて下さい。 また、二次汚染の防止の意味で、魚介類の調理には専用の調理器具を使用し、使用後はよく洗浄殺菌することも効果があります。 |
病原性大腸菌 |
病原性大腸菌は健康な人や動物の腸管内に存在する大腸菌のうち、病原性を有する菌をいいます。病原性大腸菌は次の4つに分けられます。 1.毒素原性大腸菌:人の腸管内で毒素をつくり、下痢を起こす。 2.組織侵入性大腸菌:赤痢のような症状を示す。 3.腸管病原性大腸菌:下痢、腹痛などの急性胃腸炎を起こす。 4.腸管出血性大腸菌:激しい腹痛を伴い、血便や腎臓障害を起こすこともある。 |
大腸菌は便による二次感染により、あらゆる食品及び水が原因となる可能性があります。また、場合によっては手指を介しても伝播することがあります。 |
食品の加熱処理を十分に行うことと、加熱調理済み食品の二次汚染を防ぐことが大切です。さらに貯水タンクや井戸水などを使用している場合は、定期的に水質検査を実施して使用水の安全を確認するとともに、貯水タンクの清掃、点検を実施し、衛生管理に努めることが必要です。 |
ウェルシュ菌 |
ウェルシュ菌は元々は土壌細菌ですが、海水等自然界に広く分布し、人や動物の腸管にも高率に存在します。また、ウェルシュ菌は芽胞をつくるため、100℃、4時間以上の加熱をしても死滅しないものがあります。 この菌は嫌気性菌であるため、食品を大量に調理加熱した場合に鍋の中が酸欠状態になって、食品の温度が発育温度域まで下がると、芽胞が発芽して急激に増殖します。従って、加熱済みのものは安心といった常識は当てはまりません。 |
大量に調理されたカレー、シチュー、めんつゆなどで、特に前日又はそれ以前に調理されたものが原因となるケースが見られます。 |
大量に調理し、作り置きを行うことは避けて下さい。また、一度に大量の食品を調理加熱した場合は小分けして急速に冷却(15℃以下)することで予防を図ることができます。 |
カンピロバクター |
カンピロバクターは家畜、家禽またはペットの腸管内に存在し、特に鶏の保菌率が多いことから、鶏肉から検出されることが多くなっています。また、豚肉や牛肉からも検出されることがあります。また、野鳥、ペット類等の保菌動物の検便由来からや河川水や井戸水から検出されることもあります。 |
鶏のささみ、バーベキュー、焼き肉等、肉の生食や加熱不足によることが多くサラダや生水等も原因食となります。 |
生肉を冷蔵庫で保存するときは容器に入れ、他の食品に接触して汚染しないようにすること、生肉を調理するときは、充分に加熱すること、この菌は乾燥に弱いため、調理に使用した器具類は熱湯で消毒した後、よく乾燥させることなどが予防効果があります。 |
セレウス |
セレウスは土壌、ほこり、水中など自然界に広範囲に分布する菌で、土に関わりのある穀類、豆類、香辛料等から高率に検出されます。 この菌は耐熱性の芽胞を作りますが、ウェルシュ菌などと違って酸素のある条件でもよく繁殖します。 食中毒はこの菌が産生する毒素により引き起こされ、この毒は熱に強いために食前に加熱しても生き残っていることがあります。 |
チャーハン、スパゲティーの麺、やきそば、オムライス等で、前日に一度炊いたものやゆでたものを翌日に使用したときに発生する場合があります。 |
この菌は少量では発症することはないので、炊きあげたご飯やゆでたスパゲティーの放冷の際は細菌の汚染を防止するために開放せずかつ速やかに温度を下げて、菌を増殖させないようにします。 |
家庭でできる食中毒予防のポイント
厚生労働省に報告があった食中毒事件だけを見ても、家庭の食事が原因となった食中毒が
全体の約20%を占めているそうです。食中毒というと、レストランや旅館などの飲食店での食事が原因という
イメージがありますが、毎日食べている家庭の食事でも発生しているし、発生の危険性がたくさん潜んでいる
ということです。ただ、家庭での発生では症状が軽かったり、発症する人が1人や2人のことが多いことから、
風邪や寝冷えなどと思われがちで、食中毒とは気づかないケースもあるそうです。
ここでは、家庭での食事作りにおける食中毒予防のポイントを示しました。
1.食品の購入
●肉、魚、野菜などの生鮮食品は新鮮な物を購入しましょう。
●表示のある食品は、消費期限などを確認し、購入しましょう。
●購入した食品は、肉汁や魚などの水分が漏れないようにビニール袋などにそれぞれ分けて包み、
持ち帰りましょう。
●特に、生鮮食品などのように、冷蔵や冷凍などの温度管理の必要な食品の購入は、
買い物の最後にし、購入したらできるだけ早く持ち帰りましょう。
2.家庭での保存
●冷蔵や冷凍の必要な食品は、持ち帰ったら、すぐに冷蔵庫や冷凍庫に入れましょう。
●冷蔵庫や冷凍庫の詰めすぎに注意しましょう。めやすは、7割程度です。
●冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫は-15℃以下に維持することが温度管理のめやすです。
細菌の多くは10℃では増殖がゆっくりとなり、-15℃では増殖が停止しています。
しかし、細菌が死ぬわけではありませんので、早めに使い切るようにしましょう。
●肉や魚、卵などを取り扱うときは、取り扱う前と後に必ず手指を洗いましょう。
石鹸を使って洗った後、流水で十分に洗い流すことが大切です。
●食品を流し台の下に保存する場合は、水漏れなどに注意しましょう。直接床に置いたりしてはいけません。
3.下準備
●台所を見直してみましょう。ゴミは捨ててありますか?タオルやふきんは清潔な物と交換してありますか?
石鹸は用意してありますか?調理台の上は片付けて広く使えるようになっていますか?もう一度、チェックをしましょう。
●井戸水を使用している家庭では、水質に十分注意して下さい。
●手を洗いましょう。
●生の肉、魚、卵を取り扱った後には、また手を洗いましょう。
途中で動物に触れたりトイレに行ったり、おむつを交換したり鼻をかんだりした後の手洗いも大切です。
●肉や魚などの汁が、果物やサラダなど生で食べる物や調理の済んだ食品にかからないようにしましょう。
●生の肉や魚を切った後、洗わずにその包丁やまな板で、果物や野菜など生で食べる食品や
調理の終わった食品を切ることはやめましょう。洗ってから熱湯をかけた後で使うように心がけましょう。
包丁やまな板は、肉用、魚用、野菜用と別々にそろえて、使い分けると更に安全です。
●ラップしてある野菜やカット野菜もよく洗いましょう。
●冷凍食品など凍結している食品を調理台に放置したまま解凍するのは避けましょう。
室温で解凍すると、食中毒菌が増える場合があります。解凍は冷蔵庫の中や電子レンジで行いましょう。
また、水を使って解凍する場合には、気密性の容器に入れ、流水を使いましょう。
●料理に使う分だけ解凍し、解凍が終わったらすぐ調理しましょう。一度解凍した食品を
再度保存のために冷凍するのは危険です。冷凍や解凍を繰り返すと食中毒菌が増殖する場合もあります。
●包丁、食器、まな板、ふきん、たわし、スポンジなどは、使った後すぐに洗剤と流水でよく洗いましょう。
ふきんの汚れがひどいときには、清潔な物と交換しましょう。漂白剤に一晩つけ込むと消毒効果があります。
包丁、食器、まな板などは、洗った後、熱湯をかけたりすると消毒効果があります。
たわしやスポンジは、煮沸すると更に確実です。
4.調 理
●調理を始める前にもう一度、台所を見渡してみましょう。下準備で台所が汚れていませんか?
タオルやふきんは乾いて清潔な物と交換しましょう。そして、手を洗いましょう。
●加熱して調理する食品は十分に加熱しましょう。加熱を十分に行うことで、もし、食中毒菌がいたとしても
殺すことができます。目安は、中心部の温度が75℃で1分間以上加熱する事です。
●料理を途中でやめてそのまま室温に放置すると、細菌が食品に付いたり、増えたりします。
途中でやめるような時は、冷蔵庫に入れ、再び調理するときには十分に加熱しましょう。
●電子レンジを使う場合は、電子レンジ用の容器、ふたを使い、調理時間に気をつけ、
熱の伝わりにくい物は、時々かき混ぜることも必要です。
5.食 事
●食卓に着く前に手を洗いましょう。
●清潔な手で、清潔な器具を使い、清潔な食器に盛りつけましょう。
●温かく食べる料理は常に温かく、冷やして食べる料理は常に冷たくしておきましょう。
目安は、温かい料理は65℃以上、冷やして食べる料理は10℃以下です。
●調理前の食品や調理後の食品は、室温に長く放置してはいけません。
例えば、O-157は室温でも15~20分で2倍に増えます。
6.残った食品
●残った食品を扱う前にも手を洗いましょう。残った食品はきれいな器具、皿を使って保存しましょう。
●残った食品は早く冷えるように浅い容器に小分けして保存しましょう。
●時間が経ちすぎたら、思い切って捨てましょう。
●残った食品を温め直すときも十分に加熱しましょう。目安は75℃以上です。
味噌汁やスープなどは沸騰するまで加熱しましょう。
●ちょっとでも怪しいと感じたら、食べずに捨てましょう。